
「住宅デバイス」未来予測レポート
設計・建築プロ必読。
住宅の新インフラ「住宅デバイス」未来予測レポート
2025.05.23

次世代の住宅は、“住まい”から“社会インフラ”へ
ドローン配送や自動ロボットの普及により、住宅には新たな役割が求められ始めています。
本レポートでは、近い将来の実装が見込まれる「住宅デバイス」の技術動向と、
設計・建築の現場で必要となる構造対応を整理。
「次の標準」を見据えた住宅設計のヒントを、実務目線でご紹介します。
※本ページは設計・施工事業者(ビルダー)の方向けのレポートです。
家を建てようとお考えの方(お施主様)はこちらをご参照ください。
ドローンポート|屋根が“着陸場”になる未来

ドローン宅配技術は実現済み。――問題は、「着陸場所」
ドローンを使った宅配は、すでに技術的には実現可能な段階に入っています。
しかし、日本国内での本格的な普及には、ひとつの大きな壁があります。
それが「住宅の敷地内に、安全かつ確実に着陸できる場所をどう確保するか」です。
実際に行われている実証試験の多くでは、広い駐車場などを想定した着陸が前提となっていますが、日本の住宅では、そのような空間の余裕はないというのが実情です。
また、たとえ敷地が広くても、地上に着陸する方法では、人や車、ペットなどとの接触の危険を完全に避けることはできません。
解決策は「屋根上着陸」——住宅デバイス共創機構の提案
こうした課題に対し、住宅デバイス共創機構では明確なソリューションを提示しています。
それが、住宅の屋根で荷物を受け取るための「ドローンポート」です。
屋根の上であれば、地上空間と物理的に分離でき、安全性を高められると同時に、都市部でも新たな敷地を必要としないという利点もあります。
これは、日本独自の住宅事情に即した現実的な解となり得ます。
本機構では、安全な屋根の上で受け渡された荷物を、取り出しやすい位置まで自動で届ける「ドローンポートエレベーター」の取り付け準備を推進します。


10年以内の可能性予測
※住宅デバイス共創機構による評価
項目 | 予想確率 |
---|---|
ドローンポートの発売可能性 | 20〜50% |
ドローンポートエレベーターの発売可能性 | 60〜90% |
対応住宅における採用可能性 | 60〜90% |
非対応住宅における後付けの可能性 | 2〜60% |
普及の鍵は「住宅側の先回り準備」
現在の課題は、ドローンの仕様(形状・サイズ・荷物の受け渡し方法など)がまだ定まっていない点にあります。
そのため、民間による本格的な宅配ドローンサービスの社会実装には、もうしばらく時間がかかると見られています。
しかし一方で、住宅側の受け入れ準備――つまり、ポートを前提とした設計・構造の備えがなければ、技術が先行しても普及は実現しません。
私たちは、「住宅が変われば、物流が変わる」と考えています。
未来の住宅に向けて、いまから備える。それが、ドローンポートをはじめとした住宅デバイスの社会実装への第一歩です。
対応工事の費用感と3つの設計パターン
ドローンポートの住宅側対応については、設計段階での備え方によって、費用と工事の難易度が大きく異なります。
以下に、代表的な3つのパターンを整理しました。
【パターンA】市販の上げ下げ窓・引き違い窓を転用(そのまま使える準備)
ドローン宅配の利用を開始する際に、上げ下げ窓や引き違い窓をそのまま荷物の受け渡し口として活用する方法です。
新築時に、窓の設置位置と納まりに配慮しておけば、あとから特別な開口部を新設する必要がなく、追加の開口部設置費用が発生しません。
【パターンB】すべり出し窓などを転用(将来対応に向けた備え)
新築時に縦すべり出し窓や横すべり出し窓、FIX窓などを設置しておき、将来的に荷物の受け渡し口を設けられる場所を確保しておく方式です。
設置済みの窓の窓枠を活かして受け渡し口を設置するため、改修時に必要な開口面積の確保や気密性の維持がしやすいという利点があります。気密性を重視する住宅におすすめです。
荷物サイズを考慮し、大きめの縦すべり出し窓の採用が推奨されます。
受け渡し口への改修費用は、部材・設計次第で変動はするものの、数万円〜10万円程度と想定されます。
【パターンC】後付けで開口部を新設(リフォーム対応)
住宅完成後、外壁に新たなドローンポート用開口部を追加する方式です。
気密・断熱への配慮、構造補強、周囲の内外装の復旧など、複合的な工事が必要となります。
採用には住宅構造との整合性が必要で、10〜30万円程度の追加費用が発生する可能性があります。

将来のドローン宅配に備えるなら、
新築時の“ひと工夫”がコストと手間を大きく抑える鍵となります。
後からではできない準備も多いため、住宅設計の初期段階での配慮が非常に重要です。
ロボット床下収納|宅内物流インフラの中枢

すぐにでも実現可能——技術は既に揃っている
「ロボット床下収納」は、自動掃除ロボットの進化系ともいえる新しい住宅デバイスです。
自動化された収納・配送ロボットが床下を移動し、居室と床下間でさまざまな物を運搬することで、新たな利便性をもたらします。
技術的にはすでに、既存の自動掃除ロボットの改造や、汎用部品の組み合わせで構成された床下エレベーターなどで対応可能なフェーズにあります。商品として発売された後も比較的早期に現実的な価格帯で普及することが見込まれています。


最大の障壁は「住宅側の物理的対応」
このデバイスの最大のハードルは、実は技術ではなく住宅構造そのものにあります。
多くの既存住宅では、床下の有効高さが不足しており、ロボットが活動できるスペースが確保されていません。
また、ロボットの出入口や昇降装置を組み込むためには構造的な前提設計が不可欠です。
さらに、床下の断熱方式も重要な要素です。
一般的な戸建住宅では床断熱が採用されることが多いですが、ロボット床下収納との相性が良いのは、基礎断熱。特に基礎外断熱です。
基礎外断熱は床下空間の環境安定性や保温性に優れ、ロボットの稼働にも適した断熱方式ですが、シロアリ被害などのリスクが知られています。
これに対応するため、スリット構造によって害虫侵入リスクを抑える「スリット外断熱」、床断熱を進化させた「コの字断熱」「プール断熱」などの改良型断熱技術も開発されており、これらは特許出願済です。
関心をお持ちのハウスメーカーの方は、ぜひお問い合わせください。


10年以内の可能性予測
※住宅デバイス共創機構による評価
項目 | 予想確率 |
---|---|
デバイス(ロボット本体)の発売の可能性 | 60〜90%※1 |
対応住宅発売の可能性 | 80〜100%※2 |
非対応住宅における後付け採用可能性 | 1〜10% |
※1数年以内に第三者メーカーによる実現が低いと判断された場合は住宅デバイス共創機構が開発着手
※2住宅デバイス共創機構のテストベッドとして建築予定
「ロボット床下収納対応済み住宅」こそが未来のスタンダードになる
将来的に、住宅の“インフラ化”する床下が当たり前になる可能性は高く、新築住宅であれば、初期から対応構造として設計することで、ロボット宅配や床下ストックの活用といった生活の効率化・省人化が実現できます。
いま備えることで、住宅のインフラ化に先回りする住宅設計が可能になるのです。
対応工事の費用感
「ロボット床下収納」に対応するための住宅側工事については、新築時に設計へ組み込むことで、将来的な対応が大幅に容易かつ安価になります。 以下は、対応住宅に必要な構造的要件と、概算費用感の一例です。
【基本的な対応要件】
- ベタ基礎構造であること(※布基礎でも、地中梁がロボットの走行に支障をきたさなければ対応可能)
- 床下の有効高さを550mm以上確保すること(ロボットが移動可能な空間の確保)
- 玄関ポーチまたは上がり框部分に、1段分のかさ上げを追加すること(構造的な高さ調整のため)
- 床下エレベーター設置場所として、910mm×910mm(柱芯)のスペースを確保すること
- 床下エレベーター設置部に電源
- 自動配送ロボットポート等に連動する場合は、開口部の用意か準備
- 通常よりも大きめの点検口の確保(可能であれば搬入用と普段のメンテ用)
【費用の目安】
- 上記に対応した構造計画および施工コストの増加分は、20〜50万円程度。
※住宅全体の設計・仕様・規模により変動します。 - このほかに、床下ロボット(荷物の水平移動)および床下エレベーター(荷物の垂直移動)が最低限必要となります。
- ビルドイン型エレベーターの導入を想定する場合、これらの機器にかかる費用は条件により異なりますが、概ね20万円〜が一つの目安です。

将来的にロボット床下収納を実装するとき、
後から基礎の高さを変えるには大掛かりなリフォームが必要になります。
新築時の“わずかな備え”が、大きなコスト回避につながります。
自動配送ロボットポート|宅配の危機に備える“次世代受け取り口”

人手不足や再配達問題により、いまや宅配の継続そのものが困難になる未来が現実味を帯びています。
この流れの中で注目されているのが、自動配送ロボットに対応する受け取り用ポートです。すでに複数の自治体や企業で自動配送ロボットの実証実験が行われており、10年以内にデバイスの普及が本格化する可能性は非常に高いと見られています。
“ただの箱”でも十分?——住宅側の対応度により仕様が分かれる
自動配送ロボットポートには、非常に簡易的な仕様から高度なインテリジェント仕様まで、多様なレベルが想定されています。
・簡易型:指定された高さに設置する「受け取り専用ボックス」
→多くの既存住宅でも後付け可能です。
・高度型:複数の荷物対応、ロック機構、ロボットとの自動連携などを備えた仕様
→住宅構造への準備・対応が必要です。
受け取り高さのガイドライン(1,900 mm/750 mm/300mm)
最新のガイドラインでは、自動で配送を行うロボットや車両と、住宅側の双方にとって合理的な3つの高さが推奨されています。
高さ | 対象 | 想定される環境 |
---|---|---|
1,900 mm | 車両中型 | 基本となるポート高さ。もっとも多くの環境に対応。 |
750 mm | 車両小型 | 小規模の集落など、車両中型の配送量がオーバースペックとなる地域。 |
300 mm | ロボット小型 | 車両の停車場所が確保できない幹線道路沿いや、マンション敷地内などに向く。 |

【受け取り高さ1,900mm中型車両対応ポート 価格一覧(簡易版)】
タイプ | 認定 | DIY費用 | プロ施工 費用 | 新築時設置 費用 | 備考・用途例 |
---|---|---|---|---|---|
無通電 壁付け | C | ¥5,000 | ¥20,000 | ¥15,000 | 主に個人宅向け。複数設置可能。 |
無通電 地盤固着 | C | ¥15,000 | ¥50,000 | ¥50,000 | 既存外構への取り付けに対応。 |
無通電 塀固定 | C | ¥15,000 | ¥15,000 | ¥15,000 | ブロック塀などへの取り付けに対応。 |
無通電 壁埋め込み | B | ¥30,000 | ¥150,000 | ¥50,000 | 建物との一体設置。 |
壁埋め込み(電動) | B | – | ¥350,000 | ¥230,000 | 自動配送ロボットとの連動などに向く。 高機能タイプ。 |
壁付 ベルトコンベア(基本) | B | – | – | ¥350,000 | 床下収納連動。設置は新築に限定される。 |
壁付 ベルトコンベア×3 | C | ¥80,000 | ¥150,000 | – | ガレージ設置想定。電源工事が必要。 |
壁付 ベルトコンベア×5 | C | ¥90,000 | ¥160,000 | – | ガレージ設置想定。電源工事が必要。 |
共同ロッカー(6世帯) | C | – | ¥450,000 | – | 限界集落などでの共同利用向け。 |
共同ロッカー(12世帯) | C | – | ¥650,000 | – | アパート・団地向け。 |
共同ロッカー(50世帯~) | C | – | – | – | マンション向け。要個別設計。 |
コンビニ受取×10口 | C | – | – | – | コンビニ受け取りに対応。 |
補足
・認定費用は別途必要です。
・B認定はハウスメーカー・ビルダーのB認定パートナーが実施
・C認定はハウスメーカー・ビルダーのB認定・C認定パートナーが実施
・無通電タイプは電気工事不要で、DIY導入が可能なケースが多い
・壁付ベルトコンベアなどの電動タイプは、新築時または専門施工が前提
10年以内の可能性予測
※住宅デバイス共創機構による評価
項目 | 予測確率 |
---|---|
自動配送ロボットポートの発売の可能性 | 70〜95%※1 |
対応住宅における採用可能性 | 60〜90% |
非対応住宅における後付け採用可能性 | 40〜99%※2 |
※1数年以内に第三者メーカーによる実現が低いと判断された場合は住宅デバイス共創機構が開発着手
※2住宅デバイス共創機構のテストベッドとして建築予定
自動配送ロボットを支える無償モビリティ特許群
「住宅デバイス共創機構」では、自動配送ロボットと物流モビリティに関する特許関連技術61件を日本国内において無償で開放しています。
歩道走行ロボット、荷室ユニット、リフトメカなどを含む幅広い技術が申請・許諾不要で利用可能であり、住宅ポートとのシームレスな連携を前提としたエコシステム構築を後押しします。

ハウスメーカー・ビルダーの皆さまへ
1,900 mm/750 mm/300mm受け取り高さに準拠した設計指針、各種特許の技術概要資料をご提供可能です。
共同実証やモデルハウス採用にご興味がありましたら、お気軽にお問い合わせください。
また、実装準備に向けた設計上の注意点などを取りまとめた手引書を順次公開しております。
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