
マンション宅配に関する課題解決
“バトン配送”で解決する集合住宅の宅配課題
〜中型車両からロボットまで、3ステップでつなぐ敷地内物流の新常識〜
2025.12.5

再配達ゼロへ。集合住宅に広がる新しいバトン配送
集合住宅の再配達や宅配ボックス不足、管理人の負担を解消する、新しい物流モデルです。
中型車両から保管所、小型ロボットへ荷物を“バトン”のようにリレー。
既築マンションへの省スペース実装や段階的な導入戦略についても具体的にご紹介します。
集合住宅の宅配が抱える現実
再配達・宅配ボックス不足・管理負担の増加。
これらの問題は単なる配送効率の話ではなく、住宅の“構造的課題”です。
住宅デバイス共創機構では、この課題を「敷地内物流の再構築」としてとらえ、
新たなモデル“バトン配送”を提案しています。
「バトン配送」とは?
1台で完結させない、3ステップ配送。
荷物を“バトン”のようにリレーし、最適な手段で届けます。

| ステップ | 担当 | 役割 |
|---|---|---|
| (1) 敷地搬入 | 中型車両 | 敷地内に一括搬入し、交通・人的負荷を削減 |
| (2) 一時保管 | 敷地内保管所 | 荷物を一時的に集中管理する中継拠点 |
| (3) 居室配送 | 小型配送ロボット | 保管所から各住戸玄関まで個別配送 |
物流負荷の分散と居住者の利便性向上を両立し、“公道から玄関まで”のラストワンマイルを柔軟に分業できます。


なぜ「バトン」が必要なのか?
集合住宅への配送サービスが抱える課題や、自動化の際に注意が必要なポイントは以下の4つです。
バトン配送を用いることで、課題解決を実現可能にします。

① 宅配ボックスの機能不全
宅配ボックスの設置数の限界や、未回収の荷物による回転率の低下。
② 居住者の「玄関受け取り」ニーズ
再配達手続きやエントランスで受け取るための移動が面倒、という玄関受け取りのニーズ増加。
③ エレベータの制約
古いマンションでは既存エレベータのロボット利用が困難。また、利用者が多い時間帯の利用は住民の理解を得にくい。
④ 1台完結の限界
公道を走ってくるロボット1台に、法制度・段差対応・混雑・走行制御などの複雑な課題を対応させるのは現実的でない。
完全無人化の実現
宅配からゴミ出しまでを自動化
バトン配送モデルは宅配効率化にとどまらず、集合住宅内の物流全体の無人化を視野に入れています。
荷物の居室配送だけでなく、住戸から共用部へのゴミ出しまで自動化することで、暮らしの負担を大きく減らします。
ロボット床下収納や自動搬送ロボットのネットワークを活用し、「宅配からゴミ出しまで」を一体化したスマートな住宅インフラを目指します。

ロボット床下収納との連携
住宅内の床下空間を活用した「ロボット床下収納」は、戸建て住宅向けに開発された、スマートな荷物の保管・管理設備です。
本機構では、この設計・運用ノウハウを集合住宅向けのバトン配送モデルに応用し、敷地内保管所や中継拠点として活用することで、効率的な物流運用を開発しています。

さらに、敷地内に十分な保管スペースを確保できない集合住宅では、近隣の戸建て住宅に設置されたロボット床下収納を一時的に借り受ける「分散型拠点モデル」を活用することで、柔軟かつスケーラブルな運用が可能になります。
一方で、機械式駐車場などを保管所に転用し、大規模な空間を確保できる場合には、その保管スペースを近隣の戸建て住宅へ貸し出すことも可能です。これにより、集合住宅と戸建て住宅が互いに物流インフラを補完し合う、新たな地域内連携モデルとして機能します。
モビリティ(自動配送ロボット)との融合
住宅敷地内の「ラストフロア」配送は、モビリティ技術を活用した小型無人配送ロボットが担当します。
これらのロボットは、エレベータや階段など、マンション内の環境に対応する走行を行い、住戸玄関まで安全・確実に荷物を届けます。
本機構では、ロボットの設計・運用指針の標準化を進めることで、敷地内物流のDX(デジタルトランスフォーメーション)を推進しています。

バトン配送モデル 導入タイプ別実装イメージ
新築マンション
設計段階からの“ロジ設計”
地下ピットやEVホール近くに保管所をあらかじめ配置し、ロボットとエレベータの共存動線を確保する設計です。


既築マンション
駐車場を活用した“省スペース導入”
平置き/機械式駐車場の一部を改修し、保管所に転用します。
バトン配送の4つの効果
① 再配達削減:確実に“住戸玄関まで届く”仕組みで課題解決
② 宅配ボックス不要:共用部のスペース利用に頼らない新設計
③ 低コスト導入:既存設備を活用した段階導入が可能
④ 物流DXの先行モデル:都市集合住宅への先進実装モデルケース化
今後の課題と展望
バトン配送モデルの普及には、ロボット導入を可能にする管理規約の整備、住宅事業者と物流事業者の保守・運用における役割分担、さらに道路交通法や建築基準法との制度的整合が重要です。
技術と制度の両面から持続可能な仕組みづくりが求められます。
おわりに:住宅における“物流動線”という設計課題
暮らしに欠かせない物流が、これまで住宅設計の前提として扱われることはほとんどありませんでした。しかし、これからの住宅には「住む」だけでなく、「届ける」を含めた設計が求められます。
バトン配送モデルは、住まいと敷地内の物流動線をつなぐための一つの提案です。
テクノロジーの導入にとどまらず、それによって暮らしの流れそのものを最適化する——その視点が、これからの住宅づくりに求められています。
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